禁煙すると眠くなる？それとも眠れなくなる？

読者さんなどから、

禁煙のアドバイスを求めれた場合、

出来得る限り、実体験に基づく有効だった方法を答えるようにしています。


そんな中でも、私としましては、


禁煙直後３日～１週間ほどは、

なるべく早く布団へと潜り込み、時間の許す限り、

いい意味で睡眠を貪るよう提言します。


どうしてかというと、

目まいや喫煙衝動などの辛い辛い離脱症状からの

最高の逃亡先が、他でもない『夢の中』だと思っているからです。



私は禁煙をスタートさせる時を、

あえて、仕事や予定のない自由の利く日を選びました。


何か作業をしていた方が、

煙草のことを忘れられるという方もいますが、

私は、自他共に認めるヘビースモーカーだったので、

この実行日の選択は、いわば、離脱症状対策そのものだったわけです。



その対策の核は、家族にどんなに『ぐうたら』と罵られようとも、

とにかく『極力、寝る』というのが、

やっぴえろ禁煙対策委員会の下した作戦でした。



私の場合、幸いにして、この作戦は上手く行きました。

日頃の疲れが溜まっていたのも、よかったのかもしれません。



しかし、実のところを言いますと、

禁煙直後の睡眠のコントロールって意外に難しいものです。



昼間、眠くて眠くて、仕方がない。

夜、きちんと眠れたはいいけど、夜中に目が覚める。

または、いつもより早い時間に目が覚めてしまう。



禁煙実行者さんの中では、

一般的に『不眠症』と呼ばれる症状を経験する方を、

多く見かけます。


しかし、何でこなん症状が現れるのでしょうか？


その答えは、もちろん、

煙草が眠りと深い関連があるからです。



そもそも、煙草に含まれるニコチンは、

以前もお話した通り、覚醒効果と鎮静効果の双方を併せ持つ、

精神に作用する物質としては、世にも不思議な性質があります。


しかも、浜松医科大学の宮里勝政教授によれば、

細かく言うと、実は、やや覚醒作用の方が優位。

つまり喫煙の作用は、興奮の方が強いんだそうです。


ちなみに、この覚醒効果は、

ニコチンが脳内のアドレナリン分泌を、

促進させることで起こるので、

やはり、眠れない夜に、ベッドから起きて一服するというのは、

科学的に見ると、なお眠れなくなってしまうというわけです。



そして、この覚醒効果の不足こそが、

おそらく禁煙後の昼間、『眠くて眠くて仕方がない』

という症状を、生み出しているのは、

何となくお気づきなるでしょうか？


どういうことかというと、

実は、ニコチンは、体内に摂り入れられることで、

私たちの『気持ちをコントロールする物質』の自然な分泌を、

変化させてしまっています。


おそらく、喫煙の期間が長ければ長いほど、その傾向は顕著でしょう。


シンプルに言うなら、

非喫煙者が日中、やる気を起こしたり、気持ちリラックスさせてたりする、

脳内物質を自然に分泌しているのに対して、


喫煙者は、ニコチンなしに、その脳内物質を正常な量、

分泌出来ない体になってしまっています。




そんなわけで禁煙後、やる気が起きない、日中眠い。

ということになってしまうわけです。


悲しいかな『ニコチンさん、あなたなしでは、辛くて辛くて』。

そんな気持ちを感じた方も、多いのではないでしょうか？



しかし、そうなると今度、不思議なのは、

昼間そんだけ眠いのに、何で夜は眠れなくなるの？

ということです。


まったくの不条理ですよね。



この理由については、人間の体が上手く出来ている証拠なのですが、

良質の眠りを保つのには、

実は『トリプトファン→セロトニン→メラトニン』

という物質の体内での変化が重要となっているからです。



トリプトファンは必須アミノ酸で、

お米や牛乳などに多く含まれる物質。


これが昼の間、トリプトファンを材料としたセロトニンとなり、

気持ちのバランスを保つ、重要な役割を果たしています。



そして、これが夜９時ごろを境に、今度はセロトニンを材料として、

人の体は、メラトニンという物質を作り出すことになります。


実は、このメラトニンこそが、眠りのホルモンと言われ、


リラックスのために副交感神経に作用したり、

体温、血圧、呼吸、脈拍などを下げ、人が眠りやすい状況を作り出します。



ところが、ニコチンは昼間の間、

体がセロトニンを作ることを邪魔します。


すると当然、夜になっても材料がないため、

メラトニンを作ることが出来ず、

眠れないという症状が起こるわけです。



そんじゃ、禁煙すれば、元に戻るんではないの？


と思うかもしれませんが、

先ほどと同じく、ニコチンは溢れる能力で、

この流れも狂わせてしまっており、

眠りのシステムが復活するまで、やはり時間を要するというわけです。



つまり、昼間の眠気も、夜の不眠も、

ある程度の期間が過ぎれば、体が機能を取り戻し、

通常の状態に改善されるわけですが、


大体の方は禁煙直後、それらの睡眠障害を感じるのが妥当です。


冷たい言い方をすれば、それは今までのツケなのでしょう。



しかし、無策で苦しむのどうかと思います。



やはり前向きに考えるなら、

ここは開き直って『睡眠障害は仕方なし』と考え、

十分に休息できる時間を作るとか、

積極的にトリプトファンを含む食べ物を摂取するとか、

昼間、十分運動（セロトニンを分泌しやすくする）するとか、


少しでも眠りやすような作戦うを行うと、

多少、症状は緩和されるかもしれません。



更に、禁煙外来を受診している場合、

医師に相談すれば、『眠剤』を処方してくれるケースもあるようです。


いずれにしろ、

禁煙の影響のみによる睡眠障害は長くは続きません。


そして、そこを乗り切れば、

煙草を求めた眠れない夜も、

穏やかに夢の中へと、誘われるようになるかもしれません。


ここは、１つ頑張りましょうね。



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